makers core 2010年12月号 (No.6)

makers core 2010年12月号 (No.6) に、安藤裕子が自身の公式サイト内ブログ「My Room」で、日本の音楽界の現状を世間に問うた「牙の行方」のその真相が、インタビュー形式で詳しく書かれてありましたので少しご紹介します。

makers core December 2010 No.6

「たぶん日本でいちばん若い編集部が作った音楽読本」と表紙タイトル上にあるように、この「makers core」という音楽雑誌は、専門学校ESPミュージカルアカデミーの音楽ライター科2年生が企画・制作しているフリー雑誌です。 けれども、とても専門学校生が作った無料雑誌とは思えないほどしっかりした装丁と内容の濃さで驚きました。 2006年からゆっくりと続いてきた雑誌だったようですが、残念ながら、この2010年12月号 (No.6)をもって最終号とのこと。

その最終号を飾ることになった安藤裕子のインタビュー記事で、世間でちょっとした論議をかもした『牙の行方』について詳細に語っています。 ここではそれを掻い摘んで、私なりの再編集再構成をして要点をご紹介。

■ 『牙の行方』をブログに掲載しようと思った理由は?

安藤 私やスタッフ、身内の人間のなかでも “もう音楽業界でご飯を食べるスタイルっていうのは、そろそろダメになってきているね” っている話をしている。 どうしたらいいんだろうっていうことを私がみんなに問いかけてみるのもありだろうと思ってブログに書いてみた。 だから、ある程度人に引っかかる書き方をしなければいけなかった。

■ なにか反応はありましたか?

安藤 すっごいありましたよ! たぶん横山健君がTwitterとかで書いてくれたっていうのもあるのかもしれない。 いろんな人からお手紙をいただいた。 ミュージシャンがこういうことを口にするなんて醜い、音楽にだけ専念してればいいのにっていう人も。 ”安藤さんが何を言いたいのかわからない” とか、音楽業界自体なくなればいいって言う人もいれば、CDを買うことで応援したいっていうファンの人も。 いろんな意見がありました。

■ 音楽制作者から見た音楽業界の現状を教えてください。

安藤 音楽業界のなかに、音楽以外のところで利益を得ている人間が多すぎると思う。

■ その現状に対して、どのように思いますか?

安藤 私ね、レコード会社とかはあったほうがいいと思うんですよ。 広げたい夢を叶えるためには、やっぱり大きなお金が要るんだよね。 バックアップしてくれる企業があるからエンターテイメントって大きく膨らむんだと思う。 ただ、彼らが追及するお金の使い方とか美学とか、そういうものはもうちょっと見直されるべきかなと。

■ そんな背景の中で、作っていきたい音楽とは?

安藤 制作ありきの音楽が世の中にあるのはいいとは思います。 CMのために曲も書きます。 私は自分の作っている音楽は芸術ではないって思ってるんだけど、ちゃんと純粋な音楽は作りたいとは思う。

■ 音楽業界の異変を感じるきっかけは?

安藤 私はCDのジャケットとかミュージック・ビデオとかのいろんな制作に参加していて、ある程度予算の管理とか流れとかそういうものが近くで見える中で、徐々に厳しそうだなっていうのは感じるようになりました。

■ CDが売れなくなっているという現状をどう思いますか?

安藤 自分でジャケットのデザインもするし、お金を払うものとしての価値を付ける努力はしてるよ。 だけど、もうみんな生活の中で本当にCDは要らなくなってきちゃってるじゃないですか。 それこそiPodみたいなものもあるし。 もうCDから得られる収入っていうのが減ってしまったわけだから、他の収入を考えなければいけないのかもしれないし、もしくは減ったぶんに見合ったリストラがされなきゃいけないかもしれない。 業界のね。

■ 他の収入というのは?

安藤 例えばiPodのダウンロードに対して、いまは課税が無いんだよね。 音楽業界に対して何の支払いもない。 ソフトを売るために、中の著作物がおまけとして売られる。 それくらい中のものが安く見られるようなものしかない世界もいけないんだと思う。 私はYoutubeとかUSTREAMとか、万々歳だと思うのね。 私なんかCMとかテレビとかに出るわけじゃないから、そうやって流れててくれたら宣伝になるからいいと思う。 でも、そういったネット上で音楽を知った人が、その音楽を好きになる以前に、ただそこから音だけ抽出するっていうのは違うよね。 ”タダのものなんて世の中にないだろう” って、そういう当たり前のことを教える大人もいないし、大人もそういう意識がない。 そもそも日本っていう国はあまり文化に興味がないというか。 とにかく幼いんですよ、人間が。

■ 現在の音楽業界の具体的な問題点は?

安藤 私はアイドル文化っていうのは大好きだからあったほうがいいって思う。 でもそのアイドルに群がる、お金の匂いに群がる人っていうのは確かに増えたんだろうね。

■ 具体的に言うと?

安藤 音楽に興味がなくても役員でいたりとか。 それはでも、日本の経済社会のなかで音楽業界が力を持つためにその人が必要だったり、その人の力があるから得られている場所みたいなものもきっとあったりするから、確かに何が邪魔とか何が問題とかここでは言えないけど。 淘汰される人は絶対される。 その淘汰されるものがすごく崇高なミュージシャンとかだったらそれは悲しいじゃん。 中身から削られたら本当に悲しいじゃん。

■ 法整備以外で音楽を守るためにできることって何かあると思いますか?

安藤 それは、もう音楽を生業にしている人間だとか、音楽が好きな人がその美意識を保つっていうことだと思う。 音楽が生まれることとか、アーティストの作った音楽を聴くっていうことを大切に思っていくことしかもう道がないんじゃないかな。

■ 今後追及していきたい音楽とはどんなものでしょうか?

安藤 やたら丁寧に作るしかないよね。 あとはおもしろがる。 つまんないと思ったら止めたほうがいいよね。 ”おもしろそう、これ!” っていうパッションと、それを追求する時間も人員もチャレンジも必要だし、それを許してくれるスポンサーも必要だと思う。 才能っていうのは枯渇しないと思うんだ。 作り方なんて、わかったらなんでも作れるわけですよ。 ただ、やっぱり人と趣味とか嗜好が合う瞬間。 その波っていうのはもちろんあって、繰り返すものだから。 それがたまたまぶつかるときがヒット曲と言われるものが生まれる瞬間かもしれないし。 でも、そんなもん狙ってやってると結局CM音楽になっちゃうから、そこはなんか狙いたくないんだよね。 自分が “これ歌いたい!” っていうのをやっていきたい。

■ 『牙の行方』の、この牙を剥く相手っていうのは、誰だと思いますか?

安藤 私も答えはわからないけど、たぶんこういう意見を表に出すっていうこと自体が世間に対して喧嘩を売ったことだと思うし。 でも、実際自分が潰したい相手っていうのは別にいないのね。 ただハード側に対して、 “もうちょっとこっちのことも考えてよ” っていう話し合いはしたいなって思う。

■ 今後の理想の音楽業界のあるべき姿を教えてください。

安藤 やっぱりミュージシャンが気持よく音楽を奏でて、音楽を聴くのが大好きな人が “この曲いいね” なんてその音を愛でて。 そういう暮らしがあれば、それがもうベストなんじゃないかなあ。

——————————————————————————————————————————————————

「ソフトを売るために、中の著作物がおまけとして売られる」
これは今、私も痛切に感じていることです。 90年代のミリオンセール連発時代とは別次元の世界になってしまいました。 実力者が実力者としてとりあえずは評価されていた時代からすると、今はマスコミもひっくるめて、「ウソとガラクタ」から金を生み出す錬金術師が業界を席巻している異常な状況のように思えます。

こんな状況に慣れてしまってはいけない。
そんな現代に「否!」と投げかけた、安藤裕子ねえやんの勇気を称えたいと思います。 惚れ直すほどの男気さえ感じます(笑)
ただし、剥けた牙は、まわりまわって自らにも向くことは最初から覚悟していただろうとは思いますが、「牙を剥けられた」と錯覚してしまった無理解で無慈悲な人によって、これをきっかけとして、ねえやんが不利な状況に立たされやしないかと、ファンの一人として少し心配でもあるというのが正直なところですね。

でもこの件で、安藤裕子の音楽に対する真剣さ、純粋な情熱を感じることが出来て、あらためて安藤裕子のファンでよかったと強く思いました。

コメント

コメントはまだありません。

コメントの投稿

ブログ内検索


カテゴリー

最近の記事

アーカイブ

フィード

* RSS 2.0 Atom

 

    ucadkids