隣人に光が差すとき (indie ver.) & ダンス・ダンス・ダンス
2001年、もう今から10年前の安藤裕子。 フェリス女学院大学という世間的に立派な女子大学を卒業しながらも就職活動はせず、音楽への熱だけはあったが、実力が伴ってもいないのに人の意見を受け入れず、わがままとぶつかりを重ねて孤立を深めていた、社会的に身寄りのない風来坊であった。
そんな中、未熟なりにも安藤裕子はたった一人で多くの曲をひたすら書いた。
この曲作りの時期に生まれた曲は、後に名曲と評される曲もいくつかある。
初めて弱音を吐いてみせた曲だという、元祖『隣人に光が差すとき』がデモ音源として自主制作CDとしてつくられたのは、そんな孤独な作業の一つの成果だった。
この曲は、同期のある女性のデビューお披露目ライブに呼ばれたときに感じた、自身のふがいなさ、焦燥感、嫉妬の気持ちを、誤魔化しなく正直に曲にしたものである。
そしてもう一つ、メジャーデビュー以降はライブでも未発表だと思われる幻のタイトル『ダンス・ダンス・ダンス』がそのカップリング曲として収録されていた。
この辺りのことは、安藤裕子ベストアルバム『THE BEST ‘03~’09』の初回版限定ブックレット「唄い前夜 – さよならに向けて -」に書かれてあるので、ご存知の方も多いと思う。
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このたび、私はこの「デモ音源 自主制作CD」の一枚だと思われるものを入手したので、少しご紹介します。
安藤裕子自身が述べていたような、手作りの紙ジャケットではなく、普通のプラスチックケース入り。 また、1枚1枚にシリアルナンバーが振られているというが、これにはCDそのものにもケースにも外観上は見当たりません。 ただ、iTunes に取り込むと、アルバムタイトルに自動的に入力された # で始まる番号があります。 「デモ音源 自主制作CD」が、トータル何枚制作され、何枚が配布されたかは不明ですが、わりと若い数字ではないでしょうか。 これを譲って下さった方があまり公にしてもらいたくないようなので、その数字は伏せておきます。 あと、散文詩と写真を並べた手作りのブックレットというものもこれには付いていませんでした。
けれども、だからといって当該品はコピー品などでないと私は思います。 CD-Rに直接貼られた、安藤裕子が描いたオリジナルのイラストとサインのシールがその証拠です。 (まあ、「これが本物」だというものを直接見たわけではないけれど)
いずれにせよ、収録されている音源を聴けば、そんなことは本当にどうでもよくなります。
ただ「素晴らしい」の一言に尽きます。
一人の女性、安藤裕子がアーティスト「安藤裕子」になろうとした理由がここに詰まっています。 未熟さを超えて、伝えようとする情念に溢れ、自身の生まれた意味を求める切実さが聴く者の魂を揺らします。 かつて安藤裕子を歌の世界に最初に導いた故小池聰行氏が感じた衝動がここにある。 最初に通して聴いたときにそう感じました。
元祖『隣人に光が差すとき』は、以前、2LDK主題歌 「隣人に光が差すとき」でご紹介したとおり、堤幸彦監督作品、映画『2LDK』の主題歌として曲の前半部分がそのまま採用されています。 メジャーデビュー後の『隣人に光が差すとき』とぜひ聴き比べてみてください。
『ダンス・ダンス・ダンス』は、私がずっと聴きたかった曲。 少しUAの雰囲気に似て、ギターがかっこいいアメリカンテイストな仕上がりです。
インディーズ時代のものとはいえ、著作権の問題がありますので、全てはご紹介出来ませんが、一部を抜粋する形で下にご紹介します。
これでも問題があると判断される関係者様からのご指摘があった場合はすみやかに削除いたします。
試聴 『隣人に光が差すとき (indie ver.) & ダンス・ダンス・ダンス』
隣人に光が差すとき (インディーズバージョン)
ダンス・ダンス・ダンス