8thアルバム 『あなたが寝てる間に』 レビュー

安藤裕子8枚目のオリジナルフルアルバム『あなたが寝てる間に』がリリースされました。
8枚目だなんて、本当に早いものですね。 メジャーデビューしてからずっと1年~2年未満周期でオリジナルアルバムを出し続けることが出来るなんて、今のご時世、本当にすごいことだと思います。

安藤裕子『あなたが寝てる間に』

勝手な推測ですが、今回のアルバムタイトルの意味は、「あなたが寝てる間にママはこんなに音を使って遊んじゃってるの。」って感じでしょうか?

アルバム全体を通して感じるのは、「さらっとした印象」。
それは決して悪い意味ではなく、一つとして似た曲調はなく、それぞれが独立してカラフルでスピード感があるけれども、溢れるほどの強い感情をもって訴えるわけでもなく、ドロドロと深く内省的であるわけでもない。 まさに今回は「いろいろ音で遊びました」って感じ。
『Merry Andrew』の後の『shabon songs』の時の感覚に似ている気がする。 そういえば、パラパラ漫画のようなねえやんの連続写真で構成されたブックレットの雰囲気も似ているしね。

『森のくまさん』
タイトルから最初、ドリーミーな安藤裕子の童話の世界かと思いきや、あまりに意外な曲調の変化と展開に驚き、でも安藤裕子らしさが不思議にミックスされて詰まっていて、このアルバムの中で私が一番にお気に入りの曲。 ただ、先日あった『KIRIN BEER “GoodLuck” LIVE』のラジオ放送で聴いたときの「うっるぅせぇー!」がすごいドスが効いていて怖いぐらいの迫力があったのに、この音源ではそれがかなり抑え気味なのが残念(笑)

『Live And Let Die』
ディレクターによると、ファレル・ウィリアムスの『HAPPY』を思いっきり意識して作り始めたらしいです。
私もこの『HAPPY』が以前から大のお気に入りで、本当に素晴らしい曲だと思います。

なるほど、比較して聴くと刻むリズムが同じ。 クラップせずにはいられない感じも、同じフレーズを繰り返すのも同様。

けれども『HAPPY』が音の振れ幅がとても大きくまさに幸せな浮遊感が感じられるのに対して、この曲は最後まで浮き上がることなく、リピートが耳に付く単調さに陥っているように感じる。 要因として、正確で強いドラムとベースにあるように思え、とくに、かっこいい沖山さんのベースサウンドがボーカルの前面に出てきてしまっていて、ボーカルそのものの浮遊感を押し殺してしまっている気がする。 また、リピートの単調さを打ち消すためにも、もっと遊び心のある変則的なアレンジがあってもよかったのではないだろうか。

いずれにせよ、『Live And Let Die』というタイトル、歌詞の内容からしても、『HAPPY』とは方向性を変えて意図してこうしたのだろう。 でもせっかく『HAPPY』からインスパイアされたのであれば、もっと安藤裕子本来の音の振れ幅のある歌声を活かし、自由自在に動かす方向にもっていけなかったのだろうかと少し残念に思う。 でも、これがアンディーさんの好きそうな感じだなということはよくわかるし、そしてたぶんこの曲は何度か聴くたびにだんだんお気に入りになっていく安藤裕子特有の「するめナンバー」となる可能性がありそうです。 さっきから何度も聴いているからすでにそうなりかけているかも(笑)

『大人計画』
どこか懐かしい感じのメロディアスな楽曲。
さすが宮川弾さん。 かわいくて心地よくて好きですこの曲。

『RARA-RO』
すでにライブで何度かお披露目されている、あの「昭和アングラハードボイルド風の曲」です。
ライブでもアルバムでも、『黒い車』や『エルロイ』などのようなポジションですね。

『クリスマスの恋人』
この曲についてはもうこれまで十分語っているので割愛!

安藤裕子『あなたが寝てる間に』

『世界をかえるつもりはない (BAND ver.)』
張りつめたようなシンプルなアコースティックバージョンとは趣きを変えて再登場。
ゆったりしている時に聴くにはこちらのバージョンの方がいいかもしれませんが、どちらが好きかというと私はやはりアコースティックバージョンですね。
先日本人も言っていたように、この曲は「戦いの曲」です。 だから飾る音は少なくていいんです。 もっと乱暴であっていいんです。
実はこの曲、実現はしなかったそうですが、ある作品の主題歌になるかもしれなかった曲だったとか。
今度のバンドライブではこの曲がアンコール前の最終曲になるのだろうな。

『レガート』
昨年夏のライブ期間中限定で無料配信された曲。
今作のアルバムの中で聴くと、曲の持つ優しさと温かさがより伝わってくる気がします。
それは今、冬に聴いていて、夏に聴いた時とは受ける印象が違うというのもあるのかも。
CMソング採用おめでとう!

『人魚姫』
NHKドラマ10「全力離婚相談」のために書き下ろされた曲。 NHKの製作陣も満場一致で即決だったという。
安藤裕子がドラマや映画の主題歌を任された時の的確性は本当に素晴らしい。
作品の主題はもちろん、登場人物の心理を短期間に深くまで読み込むことが出来るのは、やはり、原作者や映像の「作り手側」の立場を目指していた人間であるからこそ出来る一流の「センス」なんだろうと思う。

『You』
一聴して80年代チックな作風だとすぐに思えたのは当然で、この曲が松田聖子へのオマージュとして作られたから。 ちょっと「ゆず」っぽさもあるけれど。
安藤裕子チームによる80年代リスペクト、ここに極まれり。

『73%の恋人』
73%という中途半端さに逆にあざとさを感じさせはしますが(笑)、ここまで切なく美しいメロディーとゴージャスな演奏に、ほんと一本取られたって感じです。
以前のスタイルを踏襲しながらも新しい安藤裕子の方向性が見えた気がします。

『都会の空を烏が舞う』
この曲のテーマは、陰陽師だとか… うーん、わからん。
それはとりあえずおいておくとしても、こんな不思議で荘厳で素晴らしい曲をどう受け止めていいのかわからない。 ねえやんが歌っているところは、とても淡々としているのですが、アウトロにかけての弦の美しさに鳥肌が立ちます。
なにか掴みかけているけれど、まだ捉えきれない「何か」を見上げる都会の空。

■ あなたが寝てる間に (CD)

コメント

森のくまさん最高です。
カラオケで「残念無念」「うるせー」って叫びたい。

2015年2月7日 22:20 |  ゆこ

私は最近、「残念無念」が口癖みたいになりました(笑)

2015年2月8日 08:40 |  管理人トロル

お久しぶりです。
正直、このアルバムがわからなかったのです。しか〜し、
サンプラザのファイナルを体験して、やっぱりねえやんだと安心できました。
アルバム前半のガシャガシャ感にはまだ、違和感があるのだけれど、後半の出来は従来以上かもしれないと思えるまでになりました。
あと、何処かで聴いたことのあるメロディラインが多用されていると感じさせるのは、営業に走り過ぎかなと思う。
ライブで感じたのは、そんな事のすべてを吹き飛ばすほどの歌唱があるから問題ないということ。
YOUを松田聖子とデュエットして欲しいが、絶対に負けない気がするんです。

2015年4月27日 10:12 |  Kinta

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