『風街であひませう』(松本隆) レビュー

松本隆 作詞活動四十五周年トリビュート 「風街であひませう」についての簡単な勝手レビューです。
安藤裕子の音楽世界への導きとなったとも言える、”はっぴいえんど”。 そのメンバーの一員でもあった松本隆氏の記念トリビュートアルバムです。
安藤裕子がこのトリビュートアルバムに参加出来たことは、本当に安藤裕子にとっては名誉なことだったと思います。

松本隆 作詞活動四十五周年トリビュート 「風街であひませう」

安田成美で超有名な『風の谷のナウシカ』。 その安田成美の歌唱については様々賛否両論ありますが、私は昔から好きですよ。 ねえやんも先日Twitterにおいて娘さんもお気に入りだとツイートしてたぐらいですし(笑) 作曲は言わずもがな、元”はっぴいえんど”の細野晴臣氏。

この曲は、昔から金曜ロードショーにおいて映画『風の谷のナウシカ』のスポンサー紹介画面のBGMとして使用されるのみという扱いで、映画本編では最後まで流れることはありません。 監督の宮崎駿氏、プロデューサーの高畑勲氏による「作品の世界観に合わない」という理由で本編での扱いは見送られたのですが、それでもなぜか、作品イメージに合わないはずなのに販促用のシンボルテーマソングとされたのでした(笑)  ねえやんが言う、「不穏でありながらエバーグリーン」という表現は、安田成美の歌唱についてだけではなく、このいつまでも愛される名曲のもつ「浮遊感」という本質を表すのに言い得て妙です。 そして「悠久の時と自然への希求」を感じさせる。 やはりこの曲は『風の谷のナウシカ』の主題歌になるべくして生まれたのです。

手嶌葵さんで今回カヴァーしたのは、このなんとも不遇な名曲を、なんとか世間に再評価してもらいたいという一念で、「そうだ、ジブリ専属歌手が歌うなら文句ないだろ」なんていう薄っぺらな魂胆があったかどうか知りませんが(笑)、ある程度成功しているのではないかと思います。 (ちなみに最終的な選曲は歌い手本人に任されているようです)

草野マサムネさんの歌う『水中メガネ』はまるでスピッツの曲そのものですね。 それもそのはず、この曲はマサムネさん本人の作曲だから。
Chappieというなぜか複数人いる歌手の中の謎の誰か(女性)が歌っていたという(笑) その他、高橋啓太氏のソロプロジェクト「オトナモード」もカバーしているとのこと。 でも、やっぱり本人が歌うのが一番しっくりきますね。 いい曲です。

クラムボンがカヴァーする『星間飛行』は、アニメ『マクロスF』の挿入歌であり、ヒロインのアイドル歌手ランカ・リーの曲とされ、ランカ・リー役の声優である中島愛本人が歌っています。 ちょっと古い人(笑)にわかりやすく説明すると、これは、映画『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』においてリン・ミンメイ役の飯島真理本人による主題歌『愛・おぼえていますか』のようなものですね。
クラムボンバージョンは、子どもたちが「ヤッ!」って掛け声を上げるところが妙にかわいくて気に入りました。

『白いパラソル』は、元々、松田聖子主演の映画『野菊の墓』の主題歌だったそうですが、ちょっとこれこそ”作品の世界観”に合っているのでしょうか(笑) 作曲はチューリップの財津和夫氏で曲そのものも、松田聖子の歌唱もとても素晴らしいのですが…
映画は観たことがありませんが、伊藤左千夫の小説『野菊の墓』は昔に読んだことがあります。 なんともせつなく胸の詰まるような明治時代の悲恋のお話でした。
この斉藤和義バージョンは松田聖子のルンルンのブリブリアイドルバージョンとは異なり、すっかり大人なジャズテイストですね。 う~ん、ますますイメージが…

『はいからはくち』は、前述したように安藤裕子の音楽世界への導きとなった“はっぴいえんど”の名盤『風街ろまん』に収録されている曲です。 原曲はブリティッシュロックの影響を色濃く受けたことが伺える曲調ですが、やくしまるえつこによるバージョンも雰囲気が良く、むしろ、より”はいから”さんです。

『卒業』は、80年代半ばを象徴するような斉藤由貴のデビュー曲です。 これを同じYUKIという名のアーティストがカヴァーしたわけですが、元ジュディマリといえども、かつての透明感のある斉藤由貴の歌声とかわいらしさには残念ながら及びません。

『Tシャツに口紅』 ラッツ&スターによる、ザ・80年代の曲って感じ。 ハナレグミが歌っているのにそう感じます、もちろんいい意味で。 コーラスもラッツ&スターそのものみたい。 作曲は、一昨年の暮れに亡くなった元”はっぴいえんど”メンバーだった大瀧詠一氏によるもの。 幸せな80年代です。

中納良恵 (EGO-WRAPPIN’)による『探偵物語』は、悪くはないですが、若かりし日の薬師丸ひろ子の透明感には到底及びません。 やはり、鈴鹿ひろ美さんは偉大です。(只今『あまちゃん』再放送にハマリ中)

ようやく安藤裕子の『ないものねだりのI Want You』のご紹介。 安藤裕子が小学校低学年の頃にどハマリしていたあのC-C-Bのカヴァーですよ! 幼い安藤裕子がこっそり夜中に親の目を盗んで夢中になっていたドラマ「毎度おさわがせします」の主題歌にも「Romanticが止まらない」同様に採用された曲ですよ!
さすがカヴァーの女王ですね(言われてたっけ?)、しっかり自分のものにしています。 80年代半ば頃では珍しかったラップ調の曲を、これまたラップとはちょっと遠いところにいる安藤裕子が再現するということもまた珍しいことです。

残念なことに、先日、C-C-Bでキーボードを担当していた田口智治氏が覚せい剤取締法違反に逮捕されたのに引き続き、昨日、リーダーでベースを担当していた渡辺英樹氏が病死されたというニュースが飛び込んできました。 青春時代を送られた世代も、ねえやんのように子供時代に熱狂した世代も大変ショックが続いています。 世は無常。

ちなみに、私がC-C-Bの曲で一番好きなのは『原色したいね』です。 調べたらこれも松本隆の作詞だったんですね。

松田聖子の名曲『SWEET MEMORIES』。 「あの頃は若すぎて」なんていう歌詞からもわかるように、当時21歳だった松田聖子が大人の歌手への第一歩を踏み出したような曲で、タイトル同様、英語歌詞が多用されたことも印象的な曲でした。 後にペンギンアニメのサントリーCANビールのCMで親しまれました。 
小山田壮平 & イエロートレインのこのバージョンもなかなかしっとりしていていいですね。 この曲そのものが甘い記憶のよう。

スペシャル・トラックとして、細野晴臣御大による『驟雨の街』(しゅううのまち)が最後を飾ります。 この曲は”はっぴいえんど”が未完成の未発表曲のまま解散してお蔵入りしていた曲を、約40年後の現代においてあらためて完成させレコーディングしたものだそうです。 御大の色気ある歌声はまったく枯れる気配さえ見せず、むしろますます艶やかさを増していっているようです。

完全生産限定盤には、「風街でよむ」という歌詞朗読のDISC2が付属しています。 有名俳優らが情感たっぷりに松本隆の世界を語ります。 斉藤由貴本人による『卒業』、薬師丸ひろ子本人による『あなたを・もっと・知りたくて』、松本隆本人による『風をあつめて』などがレアですね。

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「風街でうたう」
1. 風の谷のナウシカ / 手嶌葵
2. 水中メガネ / 草野マサムネ
3. 星間飛行 / クラムボン
4. 白いパラソル / 斉藤和義
5. はいからはくち / やくしまるえつこ
6. 卒業 / YUKI
7. Tシャツに口紅 / ハナレグミ
8. 探偵物語 / 中納良恵 (EGO-WRAPPIN’)
9. ないものねだりのI Want You / 安藤裕子
10. SWEET MEMORIES / 小山田壮平 & イエロートレイン
11. 驟雨の街 (スペシャル・トラック) / 細野晴臣

「風街でよむ」
1. キャンディ / 斎藤工
2. 夏色のおもいで / 宮﨑あおい
3. 言葉 / 東出昌大
4. 蒼いフォトグラフ / 夏帆
5. はーばーらいと / 山田孝之
6. 瑠璃色の地球 / 井浦新
7. 夏なんです / 加瀬亮
8. 魔女 / 有村架純
9. 初戀 / 広瀬すず
10. レモネードの夏 / 中川翔子
11. 外は白い雪の夜 / 太田裕美
12. 空色のくれよん / 永山絢斗
13. 哀しみのボート / 小泉今日子
14. 卒業 / 斉藤由貴
15. 瞳はダイアモンド / リリー・フランキー
16. あなたを・もっと・知りたくて / 薬師丸ひろ子
17. 風をあつめて / 松本隆

松本隆 作詞活動四十五周年トリビュート 「風街であひませう」(完全生産限定盤)
http://www.jvcmusic.co.jp/kazemachi45/

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